2016年05月05日

よく切れる包丁はいい!

 その昔、相鉄線のミニコミ誌で沿線上にある鍛冶屋が紹介されていて、「うちの包丁はハンマーで叩いて鍛えて作っているからよく切れる」という。普通、刃物といえばそうやって作るものと思っていたけど、大量生産の包丁はそうではないらしい。よく切れる包丁を探していたので、ものはためしと牛刀を一本購入。日本刀に使われる安来鋼(ヤスキハガネ)・白紙を使った包丁。一度研げば永く切れ味が持続し、カミソリのようにくいつきがよく、絹糸のようなキャベツの千切りが易々と刻める。
 残念ながらその鍛冶屋はその後一年もたたないうちに歳を理由に閉店してしまった。最近ネットで検索すると、そこの包丁はプレミアがついて高値で取引されていてびっくりした。閉店セールのときもう二三本買っておけばよかったと思う。
 だけど最近、今ひとつ切れ味が悪くなっていて刃物専門店に持ち込んだ。下手くそな研ぎ方によって長年のうちに刃の形がかわってしまっていたのが原因。専門家に研ぎ直してもらったら、また元通り昔の切れ味が復活した。包丁くらい自分で研げると思っていたけど、いやいやぜんぜん勉強不足だった。「何でも知ってるつもりでも世の中には知らないことがたくさんあるだよ」なんておでん君の言葉が頭をよぎる。

 前々から気になっていたステンレスの包丁もその店で見せてもらった。ステンレス包丁は錆びないのが大きな利点だけど、あまり切れない、研ぐのも難しいというのがすこし前までの定説。しかし今は事情が変わってきていて、V金10号という刃物用ステンレス鋼材を使った包丁が料理人の間で人気が出てきているらしい。錆びず永切れし研げる。
 店のおやじが「ちょうど入荷したばかりだけど……」、といって箱を取り出し封を切ると、中には小箱が十個ほどはいっていて中身はV金10号のペティナイフ。大根を切らせてもらったら、さっきの研ぎ立ての白紙の包丁よりまだ少し上いくくらいの切れ味。店主は「この鍛冶職人はうまい(腕がいい)から」とか、「すぐ売り切れてしまうから」とか、「予約待ちになってましてね」とか、口がうまくて、気がつくと買っていた。それくらいいい包丁に思えた。(ちょっとカモにされたような気もする)。
 しかし研ぎ立ての刃物はたいがいよく切れるもので、上等な刃物はその切れ味が永く続く。安物はすぐに切れなくなる。しかし外見をいくら見ても区別する方法はない。しばらく使ってみるとか、自分で研いでみるとかして、やっと素性が見えてくる。包丁って同じ大きさと形のものが、百円で売られていたり、千円や五千円や一万円や五万円だったりする。百円や千円の品はともかく、はじめはどれも皆よく切れる。そう考えるとけっこう怪しい商売だな。
 切れ味だけを見て、はじめて入った店でたいした下調べもせず買っちゃったのは隙があったと反省するのだけど、今のところは怖いくらいよく切れる。「白紙よりは落ちる」と店主は言ってたけど白紙と同等かそれ以上だ。もうしばらく使い続けてみないと値段なりの価値があったのかどうかも判定できそうにない。
 まあ、よく切れる包丁っていいよ。使っていてきもちがいい。ケガもしにくい。飯もうまくなる。
投稿者: 大澤義孝  | 日記